歴史

1. ミリアム・ハスケルの誕生と起業
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生誕と背景: 1899年7月1日、インディアナ州で生まれたミリアム・ハスケルは、生活のために大学を中退し、働き始めました。その後、1924年にはニューヨークで高級ジュエリーの販売を始めます。彼女はニューヨークのMcAlphin Hotel(現103番地、16th Street)で、ココ・シャネルなどの高級ジュエリーを取り扱うお店を開きました。
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ブランド設立: その後、1926年に、Frank Hess(Macy'sのデパートでウィンドウディスプレイデザイナーとして名を馳せた人物)をデザイナーに迎え、正式に「ミリアム・ハスケル」のブランドを設立しました。
2. ミリアム・ハスケルのデザインと特徴
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ハスケル自身がデザインすることは少なく、その代わりに才能あるデザイナーを集め、正確なデザインセレクションを行っていました。そのため、ブランドのスタイルは彼女の確かな目によって形作られました。
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フランク・ヘスが主要なデザイナーであり、彼は多くの独創的なデザインを手掛けました。特に、ラリアット風のネックレスや、大きな自然モチーフ(花や葉、動物)を使用したデザインが特徴的です。また、フリンジやビーズを使ったデザインも目立ちました。
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高品質な素材を使用し、特にフェイクパールはブランドのシグネチャーアイテムとなります。第二次世界大戦後、日本から輸入したバロック風パールが多くの作品に使われ、これが後のミリアム・ハスケルのジュエリーに大きな影響を与えました。
3. ミリアム・ハスケルとその時代
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1930年代の人気: 女優ジョーン・クローフォードがミリアム・ハスケルのジュエリーを身に着けた写真が多く、ブランドの認知度が急上昇。彼女は春、秋、そしてホリデーシーズンのコレクションを年に3回発表し、特にフェイクパールを使ったアイテムは多くの女性に愛されました。
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バロックパールと日本のパール: ハスケルは、Niki Pearlという日本のパールメーカーと独占契約を結び、1958年以降、多くの作品にこのパールを使用しました。Nikiのパールは、その独特な形と美しさから、ブランドのジュエリーに深みを加え、特にバロック風パールはミリアム・ハスケルのシグネチャーとなります。
4. 戦時中の影響と素材の変化
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第二次世界大戦によってヨーロッパからの材料供給が困難になり、金属規制や供給不足に直面しました。そのため、自然素材(ウッドや羽、プラスチックなど)が使用されるようになり、戦後は再びヨーロッパやアメリカ国内のロードアイランド州から材料を調達しました。
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40年代にはビーズやラインストーンが多く使われるようになり、より華やかなデザインが展開されました。
5. 経営の変遷
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1951年、ミリアム・ハスケルは体調の問題から会社の経営を退き、その後は弟のジョセフ・ハスケルが経営を引き継ぎました。
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1960年までフランク・ヘスはデザイナーとして活動し、その後何度かの経営者やデザイナーの変更があったものの、ブランドのスタイルや品質は引き継がれました。
6. 1981年以降の復活
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ミリアム・ハスケルが亡くなった後も、彼女のスタイルは継承され、1981年にはそのスタイルを維持したジュエリーが制作され続けました。現在もブランドは続いており、現代的なデザインを取り入れつつも、オリジナルのクラシックなスタイルを大切にしています。
ミリアム・ハスケルのLegacy
ミリアム・ハスケルのジュエリーは、ヴィンテージジュエリーの中でも非常に高く評価され、コレクターズアイテムとしても人気があります。特に、彼女のシグネチャーであるフェイクパールやバロックパールを使用した作品は、ファッション業界において大きな影響を与えました。
彼女のデザインは、今もなお多くのジュエリーデザイナーに影響を与え続け、ファッションの歴史に名を刻んでいます。
ミリアムハスケルジュエリーの刻印と年代について
ミリアムハスケル(Miriam Haskell)のジュエリーは、その美しいデザインと高い品質で知られ、今でもコレクターにとっては貴重な存在です。特に刻印については、年代ごとの変化があり、ジュエリーの真贋を見分ける際には重要なポイントとなります。この記事では、ミリアムハスケルのジュエリーにおける刻印の歴史を振り返り、その変遷を解説します。
40年代までのミリアムハスケルジュエリー
ミリアムハスケルのジュエリーの初期、つまり1940年代までの製品には、特に明確な刻印がありませんでした。多くのジュエリーにはペーパータグが使われており、「アンサインミリアムハスケル」と呼ばれる状態で販売されていました。この時期のジュエリーは、刻印が無いため見分けが難しく、真贋を判別するには他の特徴を頼りにする必要があります。
1948年: 馬蹄形タグの導入
1948年になると、ミリアムハスケルは新たな刻印方法として「馬蹄形タグ」を導入しました。この馬蹄形タグはジュエリーの一部として取り付けられ、非常に特徴的なデザインを持っています。しかし、このタグは半田付けが難しく、フィリグリーバックがないネックレスやブレスレットなどには取り付けることができないという技術的な制約がありました。
この馬蹄形タグは、ジュエリーにおけるミリアムハスケルのシグニチャー(サイン)としての役割を果たし、今でもこの時期のジュエリーを識別するための重要な手がかりとなります。

1951年: オーバル刻印の登場
1951年には、馬蹄形タグに代わってオーバル形の刻印が登場します。このオーバルタグは、ジュエリーのさまざまなデザインに対応できるように改良され、どんなピースにも取り付け可能となりました。この刻印はチャームとしても使用でき、シンプルで洗練されたデザインが特徴です。
この時期の刻印には、「MIRIAM HASKELL」と書かれており、ジュエリーの裏側に反転して刻印が見えるタイプもありました。しかし、1979年以降、裏側が完全にフラットになったオーバルタグに変更され、さらに見分けやすくなりました。
70年代の変化と新技術
1970年代には、ミリアムハスケルのジュエリーにも新たな変化が加わります。特に注目すべきは、1975年に実際に使用され始めたスライド式のクラスプや、手書きでサインが入った陶器製の花モチーフのジュエリーです。これらは、70年代のミリアムハスケルジュエリーに独自の特徴を加え、他のブランドとの違いを際立たせました。
また、この時期からエンドクラスプが使用されるようになり、ジュエリーの製造過程にも効率化が図られました。これにより、従来のバックストリンギング技法を使用しない製品も増え、コストの面でも改善が見られました。

ミリアムハスケルのジュエリーは、年代ごとに異なる刻印とデザインが施されており、その歴史を知ることで、より深くジュエリーの魅力を理解することができます。特に、馬蹄形タグやオーバルタグは、ジュエリーの価値を高めるために重要な要素となっています。
コレクターにとっては、これらの刻印を見分けることが、真贋を確認するための大きな手がかりとなり、購入時の参考になります。また、年代ごとに異なるデザインや技法を楽しみながら、ミリアムハスケルのジュエリーコレクションを充実させることができます。

ミリアムハスケルジュエリーの特徴と偽物の見分け方
ミリアムハスケル(Miriam Haskell)のジュエリーは、その美しいデザインと高い品質で知られ、多くのコレクターに愛されています。この記事では、ミリアムハスケルのジュエリーの特徴と、偽物を見分けるためのポイントをご紹介します。ミリアムハスケルの本物のジュエリーを購入するためには、製品の作りや素材に注目することが重要です。
1. ハンドメイドのワイヤー留めと半田付け
ミリアムハスケルのジュエリーは、非常に丁寧に作られているのが特徴です。特に、接着剤を使わず、ワイヤー留めと半田付けで作られていることがその特徴となります。これは、ハスケルのジュエリーを識別するための大きなポイントです。しかし、長年の使用や経年劣化により、クラスプやビーズのモチーフが腐食し、持ち主によって接着剤で補強されているものもあります。そのため、ジュエリーがオリジナルの状態でない場合もあることを理解しておきましょう。
2. フック型クラスプとワイヤー留め
ミリアムハスケルのジュエリーにおけるクラスプ(留め具)は、真偽を見分ける重要なポイントです。ハスケルのジュエリーでは、ワイヤーでパーツを留める際、フィリグリーのホールの最も近い穴同士をつなぎ合わせています。このように、ハスケルのジュエリーは極力見えない部分に工夫を凝らし、デザインが繊細であることが特徴です。また、ハスケルが使用したクラスプのサイズは常に2.5mm x 13.6mmのスクエアオフ形状です。チェーンはジャンプリングで繋がれており、必ずネックレスの右側に付けられています。
3. フィリグリーと金色の特徴
ハスケルジュエリーの特徴的な要素の一つが、フィリグリー(細工された金属の網状パーツ)です。フィリグリーは重ねられた金属が非常に細かく作られ、立体的なデザインが多いのが特徴です。しかし、偽物のハスケルジュエリーでは、金色が統一されていない場合があります。本物のハスケルジュエリーは、ロシアンゴールドプレート(RGP)という手法を使用して、金の濃淡が微妙に異なる場合がありますが、金色の調和がとれており、偽物のようにバラバラな色合いにはなりません。
4. ロシアンゴールドプレート(RGP)
ミリアムハスケルのジュエリーに使用されている金属は、ロシアンゴールドプレート(RGP)と呼ばれ、James Bradyによって開発された技法で加工されていました。これにより、ハスケルジュエリーは非常に高品質な金メッキを施され、独特の光沢を持っています。RGPは、通常の金メッキよりも強度が高く、ジュエリーが長く美しい状態を保つことができます。
5. 偽造品の見分け方
ハスケルのジュエリーには刻印が入っていない「アンサインミリアムハスケル」と呼ばれる製品もあります。このようなアンサイン品と刻印がある製品は、実はどちらも本物であることが多いですが、刻印の有無を気にするコレクターには注意が必要です。ミリアムハスケルは、自社でジュエリーの修復を行っていたため、修復の過程で新しいパーツに古い刻印を付けることがありました。そのため、刻印がないものも含め、すべてのハスケルジュエリーが偽物というわけではありません。
また、イヤリングやフープ型のジュエリーには「PATPEND」という刻印がされている場合があります。これは特許申請中の製品を意味し、ハスケルジュエリー特有のデザインに使われていたことを示しています。


ハスケルジュエリーの真偽を見分けるための主なポイントをご紹介します。
1. 50年代以降の刻印
ハスケルのジュエリーには、50年代以降、ほぼすべてのピースに刻印が施されています。特に、1960年代以降は「Miriam Haskell」や「Haskell」の刻印が、ネックレスやイヤリング、ブレスレットなどに確認できます。刻印がない場合、アンサイン(無刻印)という状態もありますが、これには注意が必要です。アンサイン品でも本物であることはありますが、偽物も存在するため、他の特徴と合わせて見分けることが重要です。
2. パーツの品質と統一感
ハスケルのジュエリーでは、パーツやビーズが厳選されており、そのクオリティは非常に高いです。デザイナーが一つ一つのパーツを慎重に選んで作り上げているため、違和感のあるパーツや色の合わないビーズ、クオリティが低いパーツが使われることはありません。もしパーツに違和感がある場合、それは偽物である可能性が高いです。
3. 接着剤の使用とワイヤーワークの確認
本物のハスケルジュエリーでは、接着剤はほとんど使用されていません。ワイヤーで丁寧にパーツが留められており、ワイヤーワークは繊細で精緻です。偽物のハスケルジュエリーでは、大雑把なワイヤー留めが施されていることが多く、これが一つの見分け方となります。ただし、第二次世界大戦前の作品や後に修復されたもの、または経年によるワイヤーの腐食がある場合、接着剤で補強されたピースも存在しますので、注意が必要です。
また、トリファリやKTF(ケイ・ティ・エフ)刻印があるジュエリーのように、特に戦前の作品では、ラインストーンが接着剤で固定されていることがあります。この場合、接着剤が使われていても本物である可能性が高いので、年代とデザインを考慮して判断しましょう。